Vol.15 ソーシャルサイト

 ウエッブが新聞・雑誌などのような社会的に大きな影響力をもったメディアになることはあるのだろうか。ネット上に社会メディア「ソーシャルサイト」ともいうべきものができないものだろうかと常々思っていたら「アメリカ・メディア・ウォーズ」(講談社現代新書)という本で、米国ではすでにネットオンライン報道機関が多数生まれている事を知った。

 旧来の新聞社がデジタル版を出すというのと違って、独立した組織、NPOなどがオンラインだけで展開しているデジタル時代ならではの全く新しい動きだ。中にはピュリツアー賞を受賞するところも出るほどの実績と信頼を獲得しているという。

 その中の一つ、「ハフィントン・ポスト」の日本版を朝日新聞が運営している。内容は本家のスタイルを踏襲して朝日デジタル版のニュースや海外からの投稿、各界の専門家のブログなどを総合的にまとめている。開設して半年ほど。現在の訪問者は月間600万という。さてこれが日本でも成功するかどうかだ。かつて「オーマイニュース」というウエッブ報道サイトが日本で開設されたことがあった。編集長だった鳥越俊太郎氏は、「落書きのような掲示板とは違って編集者が責任を持って運営するウエッブメディア作りを目指す」という趣旨の抱負を述べていた。が結果はわずか3年余りで閉鎖となった。要は人を引き付ける魅力を創りだせなかったのだ。ウエッブの特性に期待しすぎた「市民みんなが記者」という安易なコンセプトにも問題があったと思う。

 前掲の本によれば米国のオンライン報道機関は新聞社などのメディアで経験を積んだ記者や編集者などが集まって立ち上げたり、組織に参加している。独自の取材ネタ、社会的にインパクトのある特集など内容的なもので勝負をしているという。その上にそんな既存メディアでは得られない内容やその活動を物心両面で支える多くの支援者がいることで成立しているようだ。はたして日本でウエッブメディアの「ソーシャルサイト」ができるだろうか。メディア側とともにネット参加者の質が問われている。


小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。