Vol.14  いいね!

 安倍首相の靖国神社参拝に対してマスメディアはいずれも隣国との関係をさらに悪化させ、ひいては東アジアの不安定化が世界的な不安を惹き起こす危険性があると批判的な報道姿勢をとっている。秘密保護法の強行採決への反発が冷めやらぬ中でのいわば独断的靖国強行参拝である。奢りの見える政権に危うさを感じる世論が一気に高まり、このことが政権の躓きとなるという予測をするところもでていた。だが現実はちょっと違う展開となっている。靖国参拝直後、安倍首相のfacebookで「いいね!」が2万件を超えたという。この数字は首相就任時以来の高い記録だという。さらにYahoo!のネット調査でも参拝支持がおよそ80%に達し、TBSやテレ朝の生番組の中で受けた視聴者の声でも支持が不支持を圧倒するという結果となったという。

 マスコミの「世論」とネットの「世論」とのかい離はこれまでにも見られたことだが今回ほどの明確な違いはなかったように思う。もともとマスコミ的にはネットは別世界という意識がある。ボタンをクリックするだけでの調査に正確性や信憑性がないといった理由をつけて無視、あるいは所詮「ネトウヨ」のたわごととして取り上げることは無かった。しかし明らかに状況は変わっているのではないだろうか。例えば秘密保護法をめぐってマスコミ各社が世論の80%以上は反対と伝える中、ネットニュースJCASTの調査では支持が55%を占め、ニコニコ動画でも36%が支持だったと伝えている。沖縄の辺野古埋め立てをみとめた知事判断についてYahoo!の調査は70%以上が妥当としている。ちなみに琉球新報の調査では不支持が61・6%である。もはやこれらの現象が単にネット派のマスコミ嫌いの表れとかお祭りさわぎといったことだけで済ますことはできないだろう。

 朝日新聞の調査でも明らかに20代30代の人たちの靖国参拝の支持率は高いし、安倍首相のコメントと同じような理由を挙げる人が多いことに驚く。若い人たちの意識は静かに変わっているのである。戦前、新聞マスコミが世論に迎合するようになったのは「批判的な論調では売れなくなった」ためという。ジャーナリズムを語る以前に経営の問題が理由だったとの見方がある。さてネット世論の勢いに直面してマスコミの安倍政権批判が少しトーンダウンしているように思うのは私だけだろうか。


小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。