Vol. 8 半澤直樹 

 もはやテレビの時代は終わったと言われて久しいと思っていたら、突如NHKの「あまちゃん」とかTBSの「半沢直樹」が大ブームだ。テレビ離れしていたと言われる若者たちを含めてテレビへの注目が一気に高まっている。やはりテレビの底力は依然大きい、良い作品があればテレビのメディア力は発揮されるということで、消えゆくメディア産業とまでささやかれていたテレビ業界がにわかににぎやかになっている。だが話はそれほど単純ではないような気がする。

 確かに高視聴率を獲る、というのはその作品が視聴者の心をつかむ何か大きな力を持っているということ。だが逆に視聴率が高ければ良いドラマかというとその評価は分かれる。「半沢」の内容がそれほど良かったとは私にはどうしても思えない。それでも最終回の視聴率が40%を超しているとなるとこれは単に番組の良し悪しとは違った別の要素を考えなければならないのではないか。

 テレビは今でもリアル視聴が前提でありせいぜい録画による視聴までだ。だが今はスマホの時代である。視聴者はテレビを見ていなくても、その情報だけは映像を含めてリアルタイムでやりとりしている時代だ。作品を頭からじっくり鑑賞するというよりは部分部分の情報を愉しむという視聴に変化している。時としてその情報は番組を離れた話題となって駆け巡る。それでもテレビに戻ってくれれば局としては良いことには違いないが、テレビが話題つくりの材料提供メディアになってしまっては元も子もない。

 


 

小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。