Vol. 6 東京五輪 

 2020年オリンピックの東京招致を喜ばない人はいまや非国民呼ばわりされるそうで書きにくいが、この国を挙げての喜びようと騒ぎようは少々異常ではないだろうか。もちろん厳しい招致競争を勝ち抜いて選ばれたのである。しかも地球規模の大イベントを開催することで東京が日本が世界の注目を浴びることになるのである。久々の明るい希望の持てるニュースである。興奮しない方がおかしいという訳だろう。だが待って欲しい少し前までオリンピック招致の賛成派は40%程度ではなかったか。

それがなぜ急にこんなにも関心が高まったのか。キーとなったのはやはりマスコミ、テレビであり、そのマスコミの使い方の旨さにあったように思える。誰がそのシナリオを描いて動いたのかは分からないが、猪瀬知事が言うように「オールジャパン」の意識を作るためにこれまでにない綿密かつ緻密な戦略が展開されたのは間違いない。IOC総会が近付くにつれてマスコミが連日大騒ぎしはじめて関心が一気に高まった。最終プレゼンが駄目押しである。日本のプレゼンがこれほど世界をうならせるほど旨いとはとは別の驚きと発見でもあったが、結局はこの「シナリオ」にのせられて、視聴者はサッカーの国際試合をみるように日本を応援し、その試合結果を固唾をのんで待つことになった。

 その興奮いまだ収まらずというところだが、関心は早くも建設特需や外国人観光客の増加、消費の拡大などなどオリンピックの商業的経済効果に向かっている。実はそれがオリンピック招致の最大の目的だということなのだが、いまさらそんなことを言っても始まらないか。でも一つだけ良いことはある。安倍首相が世界に向けて「原発事故はコントロールしている」と見栄を切ったことだ。これが原発事故の現実を見詰め直す機会になったのは唯一のプラス面だ。連日原発事故の報道が始まった。


小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。