Vol. 11 カジノ 

 東京でオリンピックが開催されることが決まったことに合わせてカジノを作ろうという声がにわかに高まっている。お隣中国のマカオが今や本場ラスベガスを抜いて世界最大のカジノ地区になったそうでシンガポールやオールトラリア、韓国さらにマレーシア、フィリピンなども参入してアジアのカジノ市場は急拡大しているという。そこで日本もカジノを海外からの観光客を呼び込む切り札にして同時に周辺に宿泊施設や会議場、ショッピングセンターなどの施設も整備して、雇用の促進や税収の拡大につなげれば日本の経済も活発化するというのが促進派の皮算用だ。個人的にはあっても良いかなと思う程度だがどうもこの手の話はすぐに箱もの行政的な施設の話や、収入規模が00億ドルといったお金の話になって、興味が殺がれる。都市国家的マカオやフィリピンがカジノに懸けるのは分かるし何にもない砂漠の土真ん中にあるラスベガスも意味があった。日本に作るなら単純に地域開発とか金儲けだけでない何か理屈が欲しいということだ。

 このままいけば、借り物の別世界がもうひとつ出現するだけのような気がする。おなじ借りものでもディズニーランドはそこにディズニーの思想や文化が流れているからまだいいが、カジノにそれはあるのだろうか。ラスベガスを真似たものかマカオ的なのか分からないがいま都市郊外に出現しているはカジノのミニ版のようなパチンコ店の巨大施設ができるだけなら面白くない。ギャンブルやるのに屁理屈はいらないかもしれないが、どうせならここに遊びの文化、社交の文化さらに都市の文化が花開くようなことになればいいのだが。江戸の吉原のような世界ができないものかと夢想する。


小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。