Vol.14 「外国人騎手」

 2月16日(月)、東京都港区にあるJRA(日本中央競馬会)六本木事務所で新規騎手の記者会見が行われました

 今年の目玉は、外国人騎手。フランス国籍のクリストフ・ルメール騎手(35歳)、イタリア国籍のミルコ・デムーロ騎手(36歳)。2人とも世界各地で大レースを数多く勝っていて、すでに国際的名手です。

 日本でも長期間に渡って実績十分。黒のスーツ、クリストフ・ルメール騎手は今から10年前、有馬記念でハーツクライに騎乗。無敗のディープインパクトに土をつけた一戦は今でも語り草です。JRAのGレース通算5勝。

 
 

 グレーのスーツ、ミルコ・デムーロ騎手は2003年にネオユニヴァースで日本ダービーを勝つなど、JRAのGを10勝しています。やはり日本でおなじみクリスチャン・デムーロ騎手(22歳)は、年の離れた実の弟です。

 
 
 

 外国人騎手2人の日本での騎乗は、これまで「短期免許」という制度によるものがほとんどでした。短期ですから、年間で最長3ヵ月。また、同時に登録できるJRA短期免許騎手は5名までで、場合によっては空きがないことがあります。前出のクリスチャン・デムーロ騎手も、短期免許取得での騎乗。

 
 

 「日本の競馬はすばらしい」「日本の馬で海外の大レースを勝ちたい」と語る2人。競馬ファンにとっては頼もしい味方です。母国語ではない英語の筆記試験、日本語による口頭試験を突破してのJRA新規免許取得。家族を日本に呼び寄せて、意欲は満々です。もちろん腕は超一流。常に日本で騎乗するようになれば、2人とも年間100勝程度は勝てるはずです。Gでのワンツーフィニッシュも見られることでしょう。

 しかし、ということは年間で100レース以上、日本人騎手の勝ち鞍が減ることを意味します。優勝劣敗の世界とはいえ、厳しいですね。この日、同時に騎手免許を交付された4人の新人騎手(17〜18歳)は、手ごわいを通り越して雲の上の2人が“同期生”となりました。いずれGレースで両騎手と顔を合わせることができるかどうか、とにかく努力してほしいと思います。

 JRA通年所属騎手としての初日は3月1日(日)になります。クリストフ・ルメール、ミルコ・デムーロ騎手の騎乗予定は阪神競馬場。当日の重賞は阪急杯(G)で、ともに騎乗依頼を受けるのはほぼ間違いありません。どちらかが勝って、日本語でインタビューも……。ぜひご注目ください。


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.13  「デビュー1年目で大暴れ」

 「また小崎綾也騎手!」

 実況アナウンサーの声が一段と高くなリました。2014年3月デビュー、キャリア8ヵ月半の新人、小崎綾也(こざき・りょうや)騎手が11月16日の福島9Rで34勝目を挙げた瞬間です。

 当ブログのVol.8「見習騎手」で取り上げた19歳の新鋭。もうひとり注目した松若風馬(まつわか・ふうま)騎手と合計すると72勝(11月16日終了時点)。松若騎手はすでに30勝を超えていて2㎏減の△に昇格、一時の勢いこそなくなったものの、まだ小崎騎手より勝利数は上です。

 11月15、16日の土日2日間で、小崎騎手は6勝の固め打ち。15日は減量恩典のない特別戦で1、2着でした。もともと新人離れした手綱さばきが光っていましたが、実戦に慣れて、いよいよ軌道に乗った印象です。11月22日から△騎手になっても、活躍は続くでしょう。

 JRAのルーキーがデビュー年に30勝以上は、2006年の高倉稜騎手(37勝)以来。同時に2人となると、池添謙一騎手(38勝)と太宰啓介騎手(34勝)が1998年ですから、16年ぶりになります。

 新人騎手の合計勝ち星は年によって大きく違っていて、武豊騎手(69勝)がデビューした1987年は、他に塩村克己元騎手(現調教助手、33勝)、蛯名正義騎手(30勝)がいて、30勝以上が3人いました。武豊騎手は、レベルの高い同期生(競馬学校3期生)と修行していたことを示しています。一方、誰も15勝まで届かなかったり、新人全員の平均が5勝台という年もあります。

 新人騎手が2人、デビュー年で40勝以上は……競馬学校創設以来、例がありません。しかし、ハイレベルのトップ争いとなった今年の松若&小崎はひと味違います。小崎騎手は11月22~24日の京都競馬でも2勝を挙げました。最終日の12月28日まで、まだ1ヵ月以上を残しています(土日開催ですから、実質10日間)。史上初の快挙達成が見られるかどうか、競馬関係者は皆注目しています。


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.12  「パブリックビューイング」

 2週連続で日本列島を大型台風が直撃。特に台風19号は中央競馬が10月13日の月曜日(体育の日)にあったので、我々も心配しきり。結局、東京競馬は無事開催されたものの、京都競馬は14日の火曜日に代替開催(出馬表に変更なし)。バタバタしましたが、自然の猛威には逆らえません。

お知らせ.JPG
月曜開催.JPG

 1週前、台風18号が首都圏を通過したのは10月6日(月)の午前。その半日前、5日の日曜深夜に東京都府中市で競馬ファン向けのイベントが行われました。

 

 東京競馬場で凱旋門賞パブリックビューイング。

応援旗.JPG

 大会場に多くの人を集めて、大型スクリーンなどでスポーツを観戦するイベント。街頭テレビで力道山戦のプロレス中継(古い!)は、その端緒でしょうか。近年では、やはりサッカー。今年はブラジルで4年に1度のFIFAワールドカップが開催されて、日本各地でパブリックビューイングが行われたのは記憶に新しいところ。残念ながら我が日本代表は予選リーグで敗退しましたが、まあまあ盛り上がったようです。

 

 凱旋門賞はフランスで行われる伝統の国際レースで、勝てば文句なしに世界的名馬の評価を得られます。今世紀に入って日本馬の活躍が目立つようになり、一昨年と昨年はオルフェーヴル(栗東・池江泰寿厩舎)が連続2着。今年は、ジャスタウェイとゴールドシップ(ともに牡5歳で栗東・須貝尚介厩舎)、ハープスター(3歳牝、栗東・松田博資厩舎)の3頭が出走。外国勢に傑出馬不在の前評判で、日本馬優勝の期待が高まりました。JRA(日本中央競馬会)はこの好機に反応して、東京、京都、新潟の3競馬場でパブリックビューイング。オルフェーヴルの時も2年連続で行われましたが(新宿、梅田の映画館)、さらに大会場を用意して“その時”に備えました。

 

正門.JPG
旗とパンフレット.JPG

 とはいえ、競馬場でパブリックビューイング。冷静に考えてみると、サッカー観戦とは明らかに異質な点があります。まず、試合(レース)の時間の長さ。サッカーの1時間半以上に対して、競馬は1〜3分。2400mの凱旋門賞なら、だいたい2分半。他にレースの中継はなく、わずか150秒のために人を集めることになります。また、競馬といえば馬券ですが、パブリックビューイングは馬券を売らないイベントです。映画館ならともかく、競馬場で行うほど多くの人が足を運ぶのかどうか。レース自体を見るのに、わざわざ出かける必要はありません。フジテレビ系列とグリーンチャンネル(中央競馬の有料放送)で生中継。家でゆっくり楽しむことができるのですから。


 加えて、時間帯と場所、天候の問題もありました。凱旋門賞の発走は日付が変わる手前の午後11:30(日本時間)、しかも日曜夜。3競馬場とも都心の新宿や大阪の梅田のような繁華街ではなく、台風接近中で少なくない雨量。これだけ悪条件が重なって、さて行く人がどれぐらいいるのか。気になって取材してしまいました。


臨時入り口.JPG
トークショー.JPG

 東京競馬場2323人、京都競馬場1252人、新潟競馬場1229人。いや〜、結構集まるものですね。私は東京競馬場で動き回っていましたが、降りしきる雨の中、続々と入場者が。熱心な人は、開場(20:00)から3時間以上も待っていました。繰り返しますが、翌日平日の日曜深夜です。ちょっと驚きました。


 馬券抜きでも、ちゃんと動員できる。競馬人気もそれなりでひと安心……とは思いませんでした。


 実は普段、競馬場は入場者減の傾向にあります。インターネット投票が発達して、レース中継はパソコンで見るのが当たり前の時代です。現場や場外馬券売り場からファンの皆様(特に若年層)の足が遠のくのは、むしろ自然の流れ。単に情報を集めて馬券を買うだけなら、私も競馬場の記者席より会社のデスクが便利と感じてしまうほどです。


PV1.JPG
PV2.JPG

 では、なぜ雨中の夜に千人単位の人が集まったのか? 大レース、大イベントに関心が集中する傾向が反映されたものと感じています。現場離れが進む中、ダービーと有馬記念だけは別格。昨年は有馬記念当日(中山競馬場、入場12万4782人)、レース終了後のオルフェーヴルの引退式に何と6万人の熱心なファンが残りました。しかし、大レースのない土曜日の中山だと2万人は入りませんし、日曜日でも5万人は稀。平日に行われることが多い地方競馬も、入場者は減る一方です。長い時間じっくり競馬に取り組む人の比率は、馬券の売り上げ以上に減っています。

 

 短時間、短期間、一極集中。サッカーも、日本代表戦やワールドカップの関心度と比べてJリーグの人気が今ひとつと聞きます。プロ野球は平時にうまく人を集めている印象ですが、短期決戦のクライマックスシリーズが受け入れられたのを見ると、傾向自体は変わらないのでは……。

 

 なお、注目3頭の凱旋門賞は、ハープスター6着、ジャスタウェイ8着、ゴールドシップ14着。日本の競馬は確実に進歩していますが、世界の壁はなお厚いようです。    


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.11  「今年の秋競馬は新潟開催」

 

 9月も半ば。JRA主催の中央競馬は夏のローカルが終わり、いよいよシーズン到来、秋競馬開幕と銘打つところですが、今年は様相が違います。

 中山競馬場の改修。現在、12月の開催(有馬記念が行われる開催)に向けて工事中です。その影響により、夏の後半開催だった新潟競馬場で、引き続きレースが行われます。開催メインであるスプリンターズS(GⅠ)は、右回りの中山芝1200mではなく、左回りの新潟芝1200m。回りだけではなく、坂の傾斜も直線の長さも違いますから、普段とまったく違うコースになります。なお、関西は小倉から阪神へ。これは例年と同じです。

 

 JRAでは“12年ぶりのGⅠ開催・新潟秋競馬”で何とか盛り上げようとしていますが、どうでしょう。首都圏の千葉県船橋市にある中山競馬場に対して、県庁所在地の新潟市とはいえJR新潟駅からバスで約35分の場所(旧豊栄市)にある新潟競馬場。入場人員の減少は避けられず、加えて夏競馬から舞台が変わらぬまま。気分一新とならないのは、正直な感想です。現場記者は10月5日まで毎週新幹線で出張が続くことになり、さすがに疲れがたまりそうです。

 

 そんな今年の秋競馬ですが、我々関係業者は競馬ファンの皆様に関心を持ってもらうため、いろいろ工夫しなくてはなりません。私は過去2回の新潟秋競馬(関東の主場開催)に注目して、以下のコラムを書いてみました。ベテランファン向けの内容ですが、興味のある方はご一読を。

 

日刊競馬で振り返るGⅡ『ミスターGⅡ』。

http://www.nikkankeiba.co.jp/furikaeru/meiba201409/meiba201409.html

 

  それから……8月の大井競馬場事務局会議のこともアップしてあります。松長哲聖さん(昭和62年卒)によると「検索して上位3位に入らないとダメ」とのことですが、「海原メディア会」でググると2ページ目で10位前後。力不足ですね。もっと影響力のある人にメディア会のことを発信してもらう必要がありそうです。

 

好事記『笑顔でピース!』。

http://www.nikkankeiba.co.jp/koujiki/koujiki2.html  


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.10 取材記者の情報

 8月11〜16日は大井競馬(夜間)が6日間連続で行われます。今開催の呼び物は重賞の第48回黒潮盃(3歳限定戦、1800m)で、13日の水曜日。海原メディア会の皆様が、舞馬亭(M後輩行きつけの食堂で席は予約済み)とプラネットルーム(コース全体が一望できる特別室)に陣取って観戦される当日です。

 

 そこで、改めて競馬新聞の読み方を……いえ、堅苦しいことは書きません。大井前開催の8月1日、珍しい紙面になったのでご紹介いたします。

 

 弊社、日刊競馬の大井競馬取材記者は3名。取材歴40年の高橋光男、中堅からベテランの域に入った大平(おおだいら)誠、前回コラムで載せた入社8年目の市川俊吾。役割を分担して、様々な角度から取材を積み重ねていますが、その3人の自信の本命印がメインの第7レース(立会川駅前通り繁栄会りょうくん特別)で一致しました。二重丸の内側が黒くなっていますね。通称、ドンマーク。結構、目立ちます。

 ディチュウ(3歳牡、佐野謙二厩舎)。園田競馬から転入してきた馬で、大井では6戦目になります。転入後は未勝利ですが、重賞に駒を進めるなど、これから強くなる気配がある3歳馬。格付けはB3(B2の下、C1の上)で、中央競馬なら500万条件(格付けされた中で最下級)あたりに該当します。能力と将来性からは、もっと上で活躍できそうな素材。このクラスなら、どこかで狙いたくなる馬です。

 

 とはいえ、レースは相手しだい。ディチュウの横の枠に入ったメリーウェザー(4歳牝、村上頼章厩舎)は中央競馬から転入してきたスピード馬で、単勝(1着で払い戻しの馬券)は1番人気に推されていました。弊社本紙予想も本命◎で、これは妥当でしょう。一方、ディチュウは歴戦の4〜5歳馬相手で少し分が悪いと思われたのか、単勝は13頭立ての6番人気止まり。本紙予想は現場取材陣の意見を尊重して▲(3番手評価)でした。

 これは妙味、1番人気と6番人気で好配当。普通はそう考えるのでしょうが、同じ会社の記者として私はダメだった時のことを想像してしまいます。「現場3人がそろってコラムで推奨しておいて馬券に絡まなかったら、ちょっとマズい」。弊紙、大井競馬場の場内シェアは一番。影響力があるだけに、外れることも多々ある予想とはいえ、ファンの方に信頼されないといけない立場です。少し緊張しました。

高橋コラム.jpg
大平コラム.jpg
市川コラム.jpg

 結果、ディチュウはメリーウェザーの2着を確保。複勝(3着までに入れば払い戻しの馬券)は290円。馬複(1、2着の組み合わせを当てると払い戻しの馬券)は1530円。いや〜、正直ホッとしました。手前味噌ながらウチの取材陣、見るべきところをちゃんと見ていましたね。

 黒潮盃で1番人気になると思われる馬は、ディチュウと同じ佐野謙二厩舎所属、スマイルピース。東京ダービー2着馬で、ここを勝てば初重賞制覇となります。さて、現場トリオはどんな印とコラムの扱いになりますか。追い切り(レース前の最終調整)は9日(土曜)の午前6時20分から。私、自分の担当は中央競馬で土曜日は中央日曜版の発行日でしたが、出社前の早朝、(馬券対策を兼ねて)独自取材をしてきました。

 

 調教を見て(1000m61秒3=好タイム)、厩舎で担当厩務員とも話をしました。陣営、気合が入っていましたよ。


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.9 品川区で競馬三昧

 6月16日の午後3時すぎ、編集部で作業をしていると机の上の携帯が鳴りました。表示は、海原メディア会のN先輩。

 

  「今、大崎。どう?」

 

 非勤務日の月曜。たまたま何をするにも便利な会社にいただけで、本来なら絶好のタイミング。喜んで飲みに行くべきところでしたが、この日は4時から来客。夜も予定が入っていました。

 

 「すいません、時間がないので……。せっかくですから、会社を見て行ってください」 

 

 日刊競馬の大崎本社(東京都品川区大崎1-10-1)はJR大崎駅から徒歩3分。南改札口で待つN先輩をお迎えして、弊社社屋までご足労いただきました。

 手前、パソコンがついている机が私の席。ここで原稿を書いたり校正したり、もちろんレースも見ます。インターネットの発達で、本当に便利になりました。

 

 「6月が終わると、中央競馬は7月から福島開催です」と説明すると、

 

 「夏場は“地方競馬”かな?」とN先輩。

 

 福島競馬や新潟競馬のことを“地方競馬”と思っている人、多いですね。確かに東京や中山のような首都圏の開催ではありませんし、我々も“夏のローカル”と呼んでいます。

 

 しかし、地方競馬(公営競馬)とは、地方自治体や地方公共団体で構成される事務組合(大井競馬なら特別区競馬組合)が施行する競馬。日本中央競馬会(JRA)が施行する中央競馬とは別組織です。福島競馬場や新潟競馬場は、地方都市が所在地でもあくまで中央競馬の競馬場。地方競馬といえば、南関東公営なら大井・川崎・船橋・浦和です。

新聞.jpg

 私は入社以来、一貫して中央競馬が担当。よって、記事を書くのは宝塚記念が載っている中央版ですが、地方競馬に大変愛着を感じています(写真は帝王賞当日版)。理由は、大井競馬場(東京都品川区勝島2-1-2)が編集部から近いことも大きいでしょう。会社で仕事をしていても、思い立ったら同じ品川区内の競馬場へ。大崎→品川→立会川でJRと京急を乗り継いで十分便利ですが、タクシーで2000円弱。若手にせがまれると(?)、ついつい利用して連れて行きます。

 

 美浦や栗東から、レースの時だけ馬を運んでくる東京や中山と違って、厩舎地区が競馬場に隣接しているのも特長。交通至便で、人馬ともじっくり取材することができる施設が、会社のそばにあるわけです。

取材案内状.jpg

 その大井競馬(愛称は東京シティ競馬)に、海原メディア会の諸先輩方が来場されるとのこと。8月13日(水)、メインは黒潮盃。当然、ホスト役……と思いきや、私より来賓席に詳しいM後輩(日本文芸社)がいるので安心、安心。来賓席『プラネットルーム』を拠点に、じっくり取材していただきたいと思います。

 

 私にとっては、記者席や厩舎地区が本来の居場所。大井競馬場は7月から改修工事に入り、6月開催を最後に現在の記者席があるスタンドは取り壊しになります。6月27日(金)、千秋楽に顔を出したところ、各社の記者が引っ越しの準備に追われていました。

記者席1.JPG
記者席2.JPG

 弊社の大井担当トラックマン(競馬取材記者の通称)、市川俊吾もその一人。ずいぶんいい加減な格好をしていますが、これで結構頼りになる男。普段はもちろん、8月13日は予想をバンバン当ててもらわないと困りますね。 


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.8見習騎手

 競馬界の年度変わりは、必ずしも世間と一致しません。レース番組上では、日本ダービー(今年は6月1日)の翌週、2歳馬がデビューする週から新番組編成となります。我々の感覚では“新年度”です。

 厩舎社会(中央競馬)の人事関係の区切りは2月末日、3月1日。調教師の定年引退、新人騎手の登場など、新旧の入れ替わりがあります。

 写真は、2月17日、東京都港区にあるJRA六本木事務所(六本木ヒルズ内)で行われた免許交付式後のひとコマ。今年の新規免許騎手は7人ですが、中央に写っている柴田未崎騎手は36歳。ひとりだけ、髪型が違いますね。騎手生活を15年間送った後、2011年(平成23年)に一旦引退。調教助手を経て、騎手試験再合格という異色の経歴です。

  他の6人は、いずれも未成年の若武者。騎手養成機関である競馬学校を2月に卒業して、減量の恩典のある見習騎手として3月にデビューしました。

 見習騎手(減量騎手とも呼びます)は勝利度数により3段階に分けられています。

①30勝までが3kg減の▲。

②31勝から50勝まで、2kg減の△。

③51勝から100勝まで、1kg減の☆。

 ▲△☆の印は、見習騎手がどのランクの騎手なのか、競馬新聞などでひと目で分かるように示すものです。なお、この恩典は免許取得期間が通算3年未満の場合だけ適用されます。よって、前出の柴田未崎騎手は対象外。また、どんなに勝てなくても、誰もが3年経てば武豊騎手のような名手と同条件になることを意味します。

 騎手は、騎乗機会を自分で決められない職業です。そして、競輪選手やオートレーサーのように、原則として平等に斡旋されるわけでもありません。中央競馬だと、土日で24レース中20回乗る騎手がいる一方、1回乗れるかどうかという騎手もいます。「うまくない」と評価されれば、騎乗依頼は激減します。馬主や調教師の信頼を得るため、二十歳前後の見習期間3年が騎手人生の勝負。実に厳しい世界です。

 特別競走とハンデキャップ競走以外の、いわゆる平場戦に騎乗する場合、見習騎手はランクに応じて減量での騎乗となります。デビュー時は当然、全員が3㎏減の▲。いかにも未熟な感じの新人が大半ですが、俗に「1㎏で0秒2違う」と言われていますから、少々下手でも見習騎手は起用されます。実際、斤量の差がゴール前で大きく影響するシーンは少なくありません。

 6人がデビューして、約3ヵ月。徐々に差がつき始めました。注目騎手は2人。今のところ……ですが。

  松若風馬(まつわか・ふうま)騎手、小崎綾也(こざき・りょうや)騎手。

 5月18日時点で松若騎手は9勝、小崎騎手は7勝。見習騎手ランキングで2位、3位。1位は2年目、4位は3年目の騎手ですから、先輩に伍して堂々たる成績です。連対率(2着までに入る率)が高いのも特徴で、他の見習騎手と比べると一目瞭然。この2人、馬券で狙えます。5月24~25日の新潟競馬は騎乗数のわりに成績は今ひとつでしたが、それでも1勝ずつ挙げました。

 経験を積めば、うまくなる騎手は一気に上達します。技術があるのに、30勝まで3㎏減、50勝まで2㎏減で平場戦に乗れるとなれば、これは有利です。軌道に乗ると、どんどん勝ち星を重ねていきます。

 恵まれた面があったとはいえ、好スタートを切りました。今後につなげられるかどうかは、当人たちの精進にかかっています。もちろん、他の新人も負けたくないでしょう。栄光を目指す若者の切磋琢磨、ぜひ注目してください。


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.7オフト京王閣

 ゴールデンウィーク、もう計画はお決まりですか?

 少し趣を変えてみたい方に、気楽に出かけることができて、なおかつ極めて珍しい施設をご紹介いたします。

 3月30日、東京都調布市に南関東競馬場外馬券発売所「オフト京王閣」がオープンしました。キャッチコピーは『競輪場で競馬を見よう!』。場所は京王閣競輪場の敷地内で、バックストレッチ側にある競輪場特別観覧席を転用したものです。調布から1駅、京王相模原線の京王多摩川駅そば。新宿・渋谷などの都心からはもちろん、多摩地区にお住まいの人にとっては大変便利です。

 大井・川崎・船橋・浦和が南関東の4競馬場。原則として全日全レース発売ですから、開催の基本日程である月曜から金曜は、ほぼ営業していると考えて結構です。JRAの強豪が出走する帝王賞や東京大賞典も当然買えます。


 座席数400、窓口数9。完全会員制で、会員登録の際に必要な入会金は1000円。入会すれば2017年(平成29年)12月31日まで無料で利用できます。


 何だ、単なる馬券売り場か……いえいえ、そうでもないんです。

 もともと競輪場の特観席ですから、バンク内に目を向けると、競輪のレースや競輪選手の練習風景をゆったり見ることができます。これは日本唯一。競輪開催日なら、ノートパソコンやスマートフォン投票で“特等席“から競輪も楽しめるという、ある意味スゴい環境です。5月5日(祝・月)は、昼間の船橋競馬(メインは重賞のかしわ記念)と夕方〜夜間の京王閣競輪が重なる時間帯があります。


 そして、きれいで過ごしやすいわりに実にリーズナブル。このクラスのフロアなら、他の競馬場や場外施設だと1回あたり1000円以上の入場料金が通常です。それが3年以上利用できて、たったの1000円。職業柄、様々なスタンドを見ていますが、費用対効果は最高レベルと言っていいでしょう。

製麺室.JPG

 馬券や車券に興味がなくても、うどんが大好きという方は本格手打ちうどんの「めんこや」で舌鼓。うどん通に知られた名店で、その支店が場内レストランになりましたが、本店(幡ヶ谷)にない特長は抜群の眺望です。昼間も夜間も、カウンター席に座ると何ともいい気分。

 それを狙ってか、うどん店とは思えないほど充実したアルコール類。競馬関係業者の私が場外馬券発売所で飲むことはできませんが、皆様は上質のカウンターバーで一杯やってください!


 というわけで、一見の価値あり、と思います。仕事と称して(実際に業務の一環ですが)、月に3〜4回はオフト京王閣に行く予定です。便利で快適なんですよ、とにかく。


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.6 春の中山

 現在、JRAの関東開催は中山競馬場です。年末に行われる有馬記念は、競馬に関心のない方もご存知でしょう。春一番の大レースは伝統の3歳クラシック、皐月賞。開催最終日の4月20日(日)、芝2000mです。

 2月の大雪の影響が大きく、今季の中山芝は例年に比べて時計が遅くなっているのが特徴。まだ状態のいい開催2週目の3月8日(土)、メインレースは重賞のオーシャンステークスでしたが、芝1200mの良馬場で勝ちタイムは1分8秒9でした。最内枠のスマートオリオンがコースロスなく回って、例年(良馬場)より0秒5程度遅い決着。2着に入ったスノードラゴンは芝で勝ったことがない馬です。

 3月21日(金)に行われた3歳牝馬重賞のフラワーカップは勝ちタイム1分51秒3。良馬場の中山で行われた過去17回の中で最も遅い時計。近年、芝の改良が進んでいることを考えると、特殊な状況といえます。

 春の中山は8週間連続(今年の日程は3月1日から4月20日まで)。毎週末に行われるロングラン開催です。そのため芝が傷みすぎないように、開催途中でコース内側の柵を外側に移動します。芝コースの基本はイン有利で各馬とも内を走るため、結果、内側が最初に傷み始めます。そこで柵を外に移動すると、荒れた最内が保護され、少し外側がインコースになるという仕掛けです。

コース柵移動.jpg

 しかし、今季の競馬を見ていると、柵を移動した程度では大きな変化はない可能性が大です。特に3〜4コーナーは傷み具合が激しく、直線に入る手前で加速しにくい状態。上がりタイム(後半600m)が速くならない馬場で、前半で落ち着いたペースになっても切れ味勝負になりません。

 芝コースの傾向は明らかです。雨が降っても降らなくても、人気になっていない馬で「パワーはあるけど、瞬発力は今ひとつ」「ちょっとスピード不足かな」というタイプを狙ってください。この原稿を書いている最中にも、芝1600mの持ち時計が16頭中9番目のサトノネプチューンが8番人気で2着に食い込みました(3月23日、中山10R)。

 3月29日(土)から後半戦に突入。8日間、開催が残っています。同じ状況がこれだけ長続きするのは珍しいだけに、パワー型徹底重視は有効な戦法だと思います。

 


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.5 代替競馬

 2月は大雪が関東圏を2回直撃。交通網が乱れただけではなく、生活自体に影響が出ました。特に山梨県の被害は甚大。我々の世界も、競馬が中止になるやら調教が変則になるやらで大混乱でしたが、本当に苦労した方々と比べれば文句を言ってはいけないレベルでしょう。

140223_1450~01.jpg

 14日(金)は午前中に15日(土)の新聞を印刷した後、午後に土曜東京競馬の中止が決定。15日朝は大雪で交通マヒの中、弊社社員は各部署とも会社(品川区大崎)にたどり着いて、16日(日)分の新聞印刷までこぎつけましたが、午前11時すぎに日曜東京競馬の取りやめが発表されました。

 営業はもちろん、取材現場や編集部も錯綜する情報に振り回された挙句、土日とも東京開催がなくなって拍子抜け。結局、平日の17日(月)と18日(火)にレースが行われることになりました。関西の京都競馬と小倉競馬は日程通りだったので、15日から18日まで、4日間連続の中央競馬(JRA=日本中央競馬会の主催)。

 しかも17日の月曜日は、やはり雪の影響で中止なった9日(日)の代替競馬がすでに決まっていて、15日の代替は18日(火)、16日の代替は24日(月)。事情を知らない人にとっては、とても分かりにくい開催日程。それに伴って地方競馬の日程や発走時刻の変更などもあって、結構バタバタしました。

140223_1423~01.jpg

 代替競馬は、大きく分けて2種類あります。


①出馬表の内容を変更しないもの。
②再投票で枠順やメンバーが変わるもの。

 15日の代替(18日)は㈰で、15日版の新聞をそのまま使えました(京都と小倉を除いた当日版も作りましたが)。9日の代替(17日)、16日の代替(24日)は㈪に該当します。24日(月)は本来なかった障害レースが組み込まれるなど、若干の番組変更もあって、ともに当初とメンバーが違う新聞になりました。

 ①のケースである15日の代替(18日)のレーシングプログラム(JRA発行)には当然、“内容は変更ありません”と記載されました。しかし、前日時点で除雪が追いつかずに障害レースは中止。ここまではよくある話ですが、今回はプログラム印刷後に芝2000mを1800mにする距離短縮が発表されました。除雪ゾーンを少なくして開催するための苦肉の措置。異常事態でした。

140223_1426~01.jpg
140223_1428~01.jpg

 馬券を買う側としては、馬場状態と共に出走馬の体調も気になるところ。実際、道路で立ち往生して馬運車に乗っている時間が異常に長くなる馬が出るなど、水面下のアクシデントは少なくありませんでした。

 東京競馬場の入場人員は、17日(月)が1万5千人弱、18日(火)は1万2千人弱。普段の土日の半分以下の数字ですが、こんな状況下でも競馬場やウインズ(場外馬券発売所)に来場されたお客様……。我々関係業者は感謝しきりです。


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.4 ◎O▲△

 競馬新聞を手に取って、ファンの皆様がまず見るのは◎O▲△の予想印。


◎……レースの中心となる本命馬。予想者が1着または2着になる確率が一番高いと考えている馬です。

O……2番手評価の対抗馬。

▲……クロと呼ばれることが多く、調子や展開しだいで◎やOに先着できる馬。

△……◎O▲は1頭だけに印をつけますが、△は通常3〜5頭。1着の可能性は低くても2着か3着なら、という馬です。


 レースによって印の意味合いが若干変わるとはいえ、だいたいこんなところでしょう。


 微妙に印が違うことはありますが、関東の競馬新聞の場合、期待の高さの順番は◎O▲△でほぼ統一されています。競輪新聞だと、順番が◎O×△▲がという社もありますね。


 的中と呼んでいるのは、馬連(1着馬、2着馬の組み合わせを当てる馬券)の場合、1着2着が◎O、◎▲、◎△、O▲の4種類。1着と2着が逆でも馬連は的中ですから、1着△2着◎でも当たりと見なします。△が4つだと◎△は4通りあり、全部で7点予想になります。馬連の総組み合わせは16頭立ての際は(16×15)÷2=120通りで、その中から7点を選び出した形。単なる番号くじなら、的中確率は7÷120=約5.8%になります。

 馬連の当たり外れを年間集計したものが下の表です。何とか当てようと努力しても、レース的中率はトータルで40%あれば上々。◎の連対率(2着以内に入る率)も、なかなか50%まで届きません。

 な〜んだ、その程度か、と思われるかもしれませんが、言い訳ではなく、どう考えても当たらないレースが2割ほどある印象。一方、誰が予想しても当たるレースがやはり2割ぐらいあって、残りの6割のレースで“勝負”というのが実感です。6割のうち1/3当たれば全体のレース的中率は40%。打率.333は、野球なら首位打者争いですね。


 もっとも、中には例外もいます。確率は低くなっても、穴馬を狙い続けて高配当を仕留めるのがスタイルの記者。表だと上から2番目の予想者が該当します。


 レース的中率19.46%は15人の記者の中で最下位。14位の記者が27.37%ですから、際立って低いことが分かります。しかし、長打率(馬連3000円以上が的中)は13.35%で断然のトップ。つまり、的中レースのうち7割近くが馬連3000円以上です。土日で32レース予想するとして、平均で6レースしか当たりませんが、うち4レースは馬連7点を均等買いして700円が3000円以上(7000円なら30000円以上)に増える的中という計算になります。


 この予想者は弊社の久保木正則。日刊競馬(中央競馬版)の馬柱予想の上から4番目。美浦南馬場の時計班(調教時計を計測する記者)です。明らかに他の記者と違う個性的な予想。的中する予想に便乗すれば……。それがどのレースなのか本人にも分からないところが難点ですが、注目してみてください。

2014年1月19日
1回京都7日目12R
1着△セイラ(2番人気)、2着◎キクノグラード(11番人気)
馬連12-14 13820円的中


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.3 調教欄を読む

   以前ほど電話は鳴りませんが、新聞の読み方についてメールで質問してくる熱心なファンは少なくありません。初歩的なものから、明確な回答が難しいものまで。メールは直接編集部に届きませんが、問い合わせ担当経由で「よろしくお願いします」と私のところに回ってくることもあります。

 

 ただ、なぜか調教に関する質問がほとんどありません。調教は人間のスポーツ選手でいう練習ですが、競走馬にとっても当然大切です。中央競馬の場合、関東は美浦(茨城県稲敷郡美浦村)、関西は栗東(滋賀県栗東市)に厩舎と練習コースがあり、毎週水曜日に調教のピークを迎えます。現場から送られてくる原稿は、今でも手書き。ゴール地点から逆算して出す調教タイムも、坂路コースを除くと手動のストップウオッチ計測です。200mで15秒が基準タイム。600m走って45秒、800mで60秒以内を時計と呼んで、新聞に載せる目安にしています。

CIMG3169.JPG
CIMG3168.JPG

 スペースの関係もあって、時計はすべて載せないほうが普通です。厩舎によって調整方法は様々。調教タイムの価値は編集部で決めています。遅い時計をあえて載せないことによって、有効な時計をどれだけ出しているか明確に読者へ伝えたいと考えています。

 

 調教タイムを自在に読みこなせるファンは、かなりの事情通です。だから質問も少ないと思っています。ほとんどの方は、解説記事を読んで各馬の調子の善し悪しを判断されているのでは? もちろんそれで構いませんが、実はもったいないことです。

 

 一例を挙げましょう。1214日(土)、阪神競馬に出走したマジェスティハーツ。菊花賞で2番人気に推された、期待の大きい馬です。通常、1週間に1回は速い時計を出すべきですが、この馬は1週飛ばした形で新聞に載りました。編集したのではなく、本当に時計なし。馬体に問題を抱えている可能性がある調整過程です。実際、マジェスティハーツはフレグモーネという炎症を患い、調教を休んでいました。

131222_1314~01.jpg
131222_1314~02.jpg

 レースの3日前、11日の水曜日に好時計。厩舎談話はやや弱気でも、調教の動き自体は悪くありませんでした。「何とか仕上がった」と見た記者もいて、少し迷いました。時計の下にある解説記事は私が書いたもので、いろいろ考えた末に、見た目が良くても調整が不自然であることを強調しました。

 

 結果は……17頭立ての14着。まったくいいところがなく、本来の能力からは考えられないレースぶりでした。状態が万全でなかったのは明らか。たとえ他に情報がなかったとしても、時計の並びだけを見て的確な判断ができることがあるのです。     


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol. 2  人の行く裏道に穴馬券あり

   競馬新聞の成績欄で、まず目に入るのは前走のレース名と着順でしょう。騎手・斤量、コース・距離、勝ち馬(自身が勝っていれば2着馬)との着差もチェック。近況(1~5走前)を知り、別欄にあるコースや距離の実績を見て適性を判断。他にも、調教の内容や当日の体調、枠順、展開、今回の騎乗騎手・斤量、馬場状態、他馬との力関係……。出走各馬が馬券(1~3着)になるかどうかを決める材料は、10項目程度ではとても足りません。

 

   どの項目の検討も大切。とはいえ、競馬に詳しくない初心者の方にとっては面倒くさい作業ですよね。そこで、ついつい◎○▲△の予想印に頼ったリ、「人気薄が絡んで万馬券がいいな」と考えてオッズ(払い戻し倍率)とニラメッコしたり。

 

   もちろん、我々専門業者も人気を重視しますが、予想紙を作っている人間ですから、見る角度が少し違うかもしれません。

 

  過去の人気。馬の性能と直接関係ありませんが、私は準備用の資料に蛍光ペンでマーク。これだけを見て、穴馬券に結びつくことがあるのです。

01.jpg

 現役馬に好例がいます。ダンスファンタジア。11月までに今年は8回走って2着が3回あり、12番人気、10番人気、11番人気。複勝(3着までなら的中)は840円、630円、540円。馬連(1、2着の組み合わせを当てる)は29070円、4830円、7600円。3年前に重賞を勝ったこともある馬で、決して弱いわけではありません。いろいろな要素が重なって、能力が高いのに人気を集めにくく、好走すると配当妙味の繰り返し。ある意味、今年屈指のお宝馬でした。

『写真:日刊競馬新聞社』

『写真:日刊競馬新聞社』

 3年前のダービー馬であるエイシンフラッシュも、今年10月までに通算26回走って1番人気は3回だけ。Gレース2勝は、7番人気と5番人気。6勝して3着以内が16回ありますから、馬券に絡むわりに中心人気にならないタイプと言えます。

 

 1頭ずつ検討してヨコの比較でレースを推理するのが通常の手法ですが、それは誰もがやること。裏道は各馬のタテの比較です。ダンスファンタジアほど極端な馬は珍しくても、何回好走しても上位人気馬にならない傾向の馬は結構います。成績欄の人気と着順の並びをよ~く見て、ピンと来た馬がいたら狙ってみてください。高配当ゲットへの近道です。

03.jpg

田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。

Vol.1 もう一つのレース

  競馬新聞を読んだことがありますか? 

 徳光和夫先輩には弊紙を熟読していただいておりますが、競馬に興味のない方は知らなくていい暗号だらけの印刷物。

 しかし、サラブレッドが走っていても、走らせているのと馬券を買っているのは人間。案外、皆様のお役に立てる話があるかもしれません。

 専門業者がどこを見て何を考えているのか、少しずつ書いていきます。
10月14日に東京競馬場で行われた府中牝馬ステークスの紙面。私は「レース展開図・展開文章」「データ欄」を担当していて、準備用の資料はこんな感じでした。

tn01.jpg

 マジックで書いてある数字はコンピューター入力用の「予定の番号」。馬名横の赤線は馬の走る予想位置、下に書いてある数字はデータ項目別の順位。これらが枠順の発表と同時にレース用の馬番に変換され、瞬く間に紙面が完成するというわけです。

tn02.jpg

 最後は単なる番号にするとはいえ、新聞発行当日までいろいろ情報を集めて、多角的に考えます。逃げるのはドナウブルーかコスモネモシンかで迷いました。

 

tn03.jpg

 結局、実際の展開は紙面と逆の形になりましたが、ペースの読みも含めて、ファンの方に納得していただけたと思っています。本紙予想も11→13→3で的中。3連単は54030円でした。

 勝ったのは5歳馬のホエールキャプチャ。単勝は4番人気でした。3歳時はGI(最高格の重賞レース)で再三好走。人気面でも中心馬かそれに近い扱いが多かったのですが、安定して走らなくなった4歳以降は、1回も1番人気になっていません。2着の前々走(GI)は18頭立てで何と12番人気。

 

tn04.jpg

 1着を当てる単勝馬券の売り上げ順位である“人気”はファンが決めるもの。そう、実戦が始まる前に、すでに架空のレースが行われているのです。これをどう読むか……株式投資みたいですね。次回は、過去の人気から狙える馬券の買い方(初心者向き)を紹介します。

 


田所 直喜(たどころ・なおき)

1964年(昭和39年)6月10日生まれ。東京都国分寺市出身、妻と2人暮らしで今も在住。

海城学園は高校の3年間で、1983年(昭和58年)卒業。1年の担任は長島先生。2~3年は文Bコースで河原先生。

東京学芸大学教育学部国語科を卒業と同時に、1989年(平成元年)、(株)日刊競馬新聞社入社。以来、中央競馬担当の編集記者として活動。

現在、編集部中央課課長、採用担当責任者。